カメさんちは職人ですから、くつしたと言えば長年もっぱら軍足(ぐんそく)を愛用してきました。しかしここ数年来、夕方ともなると下脚がパンパンにむくんで、そのグロテスクな我が姿におののいておりました。
くつしたのゴムの位置で、我が足は上下に断層ができたようになります。そこでとうとう長年の軍足とお別れして、色々なワーキングソックスを試すことにしました。しかし、相変わらず夕方になると我が足はむくんでくつしたのゴムの位置には断層ができてしまいます。
それではと、ゴムの部分を必要最小限を残して、はさみでカットしてみたのですが、何のことはない、これで事態は劇的に改善され随分楽になりました。
ただ従来の軍足(写真右端)を同じようにカットしてみるとルーズソックス状態にたるんで現場では使えません。また最初から短くしたソックス(右から二番目)が市販されていますが、これはゴム部分がくるぶしの位置になるのですがワタクシ的には違和感がありますし、靴を脱ぐときにくつしたまで脱げてしまうことが何度かありました。これは靴の脱ぎ履きが頻繁にあるカメさんちの仕事では大変困ります。
…かくして長年の軍足とお別れして、今はワーキングソックスをカットして使い続けています。あ、カットした後の布切れ、未使用品ならそのまま捨てるのはもったいない。いろいろ活用できますよ。例として重曹ビンにサジを取り付けるようにしてみました(写真右上)。
軍足エレジー
ところで従来の軍足の良さはその値段の安さはともかくとして、その履きやすさこそが長年職人に愛用されてきた理由でしょう。また軍足はデザインが均一で一足一対を特定する必要がなく洗濯後の整理がラクでした。さらに軍足は綿紡なので汗を吸ってくれるし、軍足は春夏秋冬、季節を問わず使用できました。
さらにさらに、軍足が職人に愛されてきた隠れた理由があります。軍足は現場で雑巾・ウエス、小物入れなど色々なものへ、とっさの転用が可能だったことです。これは出先の現場で仕事を効率的に遂行するには、その場にあるもので作業を完工させる必要があるからです。まさに、とっさの転用ツールの一番手こそ、綿紡の軍手・軍足だったのです。
かつて軍足は1ダース単位で買うものでした。工具屋さんやワーキングショップの店先には軍手と並んで山のように積まれていましたが、そういう光景を今はほとんど見かけなくなりました。
かくして若い世代には軍足という言葉すら通用しなくなりました。IME入力でも「軍手」は出ますが「軍足」は出てきません。
時は流れ、すべては変わっていきます。それもよし。カメさんちも変わっていきますよ。生き抜くために。