最近はメーカー各社ともトイレの節水化に取り組んでおり、すばらしい製品がどんどん発売されています。かさむ水道代のことを考えると、できれば節水便器に取り換えたいと思うのは人情です。この間もお客様から節水便器の打診がありましたのでお伺いしてきました。
節水便器はハイテクが使われたすばらしいものです。従来の便器で使う1回の水量は平均13~8リットル(便器によっては20リットル必要な機種もあります)ぐらいですが、節水便器では6リットルから最少4.8リットルの水で便器を汚さずきれいに流れます。その差はすごいものです。
ただ節水便器を新たにご自宅に導入されるに当たっては、調べておかなければならない問題があります。それはご自宅の汚水配管がどのようになっているかということです。
最近の住宅メーカーなどによる排水配管は、システム化して技術的にも格段の進歩を遂げています。勾配計算がなされ、要所要所に小口径マスが設けられています。そういう場合は基本的には節水便器も問題ないでしょう。
在来配管の汚水づまり
しかし在来工法で経年劣化した排水管や、必要な会所も設けられていない状況だと、流量不足で汚物を市道下にある下水本管まで押し流せず、汚水管が詰まってしまうこともあります。
ですから、今回私がお伺いしたお客様のお宅では、お客様とご一緒にまず配管を点検いたしました。結果、配管は管路も長く、かつ古いということが分かり、お客様の判断で節水便器は見送られることになりました。
じっさい、流量不足による排水トラブルは決して少なくはありません。以前、テレビのバラエティー番組などで、節水のためにタンクの中にレンガやペットボトルなどを入れて水量を減らせばよいというアイデアがよく放送されました。
これは、とんでもない話で、これによる排水づまりのトラブルも、実際に起こっています。それでTOTOなどのメーカーサイドからも「トイレでペットボトル節水はNG」という注意が流されたことがありました。
マンションなどでの悪臭トラブル
その他、節水便器が合わない事例として高層のマンションなどで見聞するトラブルがあります。このトラブルは、「節水便器の底にたまる封水が切れて悪臭が出る」(注1)というものです。
上層の階から配管内を汚水が落下する際、管内が負圧になりますから、洗面器などの封水が破られるという事例はまま見られます。通気管が併設されているしっかりしているマンションでは、この問題は一応の解決が図られているといえます。
ところがこの「節水便器の底にたまる封水が切れて悪臭が出る」というトラブルは、その上で起こった事例ですから、その原因は未だ完全には特定されていないといいます。
とは言え、実際に起こっている事例ですから、マンションで節水便器に取り換える場合には管理組合などと事前に協議した方がいいと思われます。
※注1:『建設設備の「なぜ」がわかるトラブル解決マニュアル』 一般社団法人 建築設備技術者協会編 オーム社2016/3/24刊行 62ページ参照